意に反して蘇生処置をされてしまう患者さんを無くしたい
Yahoo!ニュースで、この様な記事がありました。
「最期は自宅で 希望者9割不搬送 救急隊の苦悩も解消 東京消防庁」
https://news.yahoo.co.jp/articles/a675162140d00c24e0537de28cc63fdd135c7498
救急隊の使命は“救命”、すなわち、生命の危機に反する患者さんには適切な蘇生処置を行い、速やかに急性期病院に搬送することです。
従来であれば、たとえ蘇生処置の希望がないがん末期の患者さんでも、ご家族が動転して救急要請をしてしまうと、接触した救急隊員は蘇生処置を施さねばなりませんでした。我に返ったご家族が蘇生処置の中断を希望したとしても、です。
*蘇生処置:心臓マッサージ、電気ショック、気管挿管などの人工呼吸など。
しかしながら令和元年12月より、救急要請をしてしまったとしても、自宅で最期まで過ごしたいとお考えの患者様の場合は、条件を満たせば救急隊員は蘇生処置を行わない、もしくは中断することが可能となりました。
そのため、当該制度開始後は、実に9割に及ぶ患者さんが救急隊員による蘇生が中断され、その後はかかりつけ医と連携して自宅で最期まで過ごしたいという、患者さん・ご家族の願いが叶えられるようになりました。
この制度は患者さんにとっても、救急隊員にとっても、そして、急性期病院にとっても歓迎すべきことであり、実際に運用され実績を上げていることを大変喜ばしく思います。
しかしながら、在宅での終末期ケアをライフワークの一つとして人生を賭ける私にとって、結局蘇生処置をされてしまった1割の患者さんの存在に、胸が痛みます。
その原因のほとんどが、救急隊員がかかりつけ医との連絡が取れず方針を確認できなかったことにある様です。
実例として、私も深夜未明に、救急隊を呼んでしまったがん末期の患者さんのご家族から、「呼吸が止まっていて驚いて救急隊を呼んで蘇生処置をされている。しかし、搬送は希望していない。今すぐ来てもらって、死亡確認してもらえないか?」と連絡が入ったことがありました。
もちろん、それまでに一度でも私が診療していれば主治医として蘇生処置の中止を申し入れ、自宅でのお看取りを行うことに何ら問題はありません。
しかし、一度も診察したことない患者さんにおいてはこのような対応を取ることは様々な制約上不可能であり、大変残念ですがお役に立つことができませんでした。
その患者さんは蘇生されながら病院に搬送され死亡が確認された様ですが、搬送されたのがかかりつけの病院ではなかったので、警察に引き継ぎされたとのことでした。その後、改めてご家族より連絡があり、「ずっとひなたに相談しようと思っていたが、“まだ大丈夫”、“未だ往診医を頼むほどではない”と考えていて、お願いするのが遅くなってしまった。もっと早く訪問診療をお願いしていればよかったととても後悔している」とさめざめと心情を吐露されておりました。
以前のブログでも述べた通り、私は「患者さんの人生最期の願いを叶える手助けがしたい。そのためには、身を粉にしてでも最善を尽くしたい」と日々診療にあたっています。
「自宅でできるだけ長く過ごしたい。できれば、自宅で最期まで過ごしたい」という患者さんやご家族がいらっしゃいましたら、早すぎることはないので当院にご相談いただけますと嬉しいです。すぐに訪問診療介入開始されなくても構いません。医師として、介入の適切なタイミングをご提案させていただきますし、療養に関するさまざまなご不安に真摯にお応えいたします。もちろん、患者さんにフィットした医療機関をご紹介することもいたします。とにかく「どこに相談していいかわからない」という患者さんのご不安に寄り添い、希望を見出していただきたいというのが率直な思いです。
大田区での訪問診療(全科対応します)や終末期ケアのご相談はいつでもお気軽に当院にお問い合わせくださいませ。真摯にお応えすることをお約束いたします。