膀胱炎にはクラビット・・・!?

膀胱炎にはクラビット・・・!?

2021.1.18
院長ブログ

・おしっこをする時にしみる

・おしっこの回数が増えた

・おしっこを出しきれない感じがする

・おしっこに血が混じる

こう言った症状は膀胱炎などの尿路感染症(尿の通り道で細菌が悪さをする病気)でよくみられます。

膀胱炎を何度か経験される方も多いので、「たぶん膀胱炎だと思うから、いつもの薬が欲しい」と電話をいただくこともあります。

ここでいういつものとは、クラビット(レボフロキサシン)を指すことが多いです。

膀胱炎にはクラビット】と記憶されておられるようです。

クラビットは、1日1回ですみ、副作用も少なく、効果の期待できる細菌の種類も多いので、非常に使い勝手の良いお薬の一つです。そのため巷では非常に多用されている抗菌薬(抗生物質)の1つです。

しかし、多用される抗菌薬の宿命として、耐性菌の出現という問題にも向き合わなければなりません。

細菌が過去に暴露された抗菌薬の成分に耐性を持ってしまい、抗菌作用が発揮されにくくなった状態を耐性化したと表現します。

現在、クラビットの耐性化がとても大きな問題となっています。

私がクリニックを開業して以来、膀胱炎や腎盂腎炎の際にはなるべく尿を採取し、どのような菌が悪さをしているか、そして、どんな薬がその菌に効きやすいか(効きにくいか)ということを調べるようにしています(培養検査と言います)。

その結果、膀胱炎を起こす細菌のほとんどが、このクラビットが効かなくなっている状態であることがわかりました。さらに問題なことに、膀胱炎以外の感染症を起こす緑膿菌の様な手強い細菌までもが、クラビット耐性しつつあることもわかりました。緑膿菌は非常に厄介な感染症を起こす菌ですが、よく効く抗菌薬がとても少ないので、クラビットが使えなくなると非常に苦戦することになります。

膀胱炎に効きにくくなってしまったクラビットは、膀胱炎の治療において意義が乏しいだけではなく、緑膿菌をはじめとした様々な細菌の耐性化を引き起こしてしまうのです

そのため、当院では膀胱炎を疑うときに、クラビットではなくセファレキシン(ケフレックス)という粉もしくはカプセルの薬を処方することが多くなっています。

十分に説明をしてセファレキシンを処方するようにはしていますが、膀胱炎にはクラビットというわかりやすさを覆すのは難しく、時として患者さんが「膀胱炎なのにクラビットじゃなくて大丈夫ですか??」と心配になられるとこもあります。

セファレキシンは、12−3回の内服が必要ではありますが、抗菌作用が高く(切れ味が鋭い)、副作用もできにくいので非常に良い抗菌薬ですのでご安心ください。

もちろん、状況に応じてクラビットを処方することもありますし、セファレキシン以外で膀胱炎を治療することもあります。医師として、目の前の患者さんにとってベストな薬を選択できるように、日々知恵を絞っております。

クラビットのみならず、良い抗菌薬は適切に使っていくことで、その効果を守っていかなければなりません。患者様により良い治療を提供するため、そして、未来の医療を守るためにも、1回1回の診療に丁寧に向き合う様に心がけております。