臨床診断との付き合い方

臨床診断との付き合い方

2022.2.4
院長ブログ

本来、臨床診断の有用性の一つには医療費の抑制が挙げられる。医者が問診と診察を駆使することで不必要な検査を減らすことができるので医療費を節約できるのだ。

しかし第6波における臨床診断の有用性は、それだけではない。検査キット(抗原検査やPCR)を必要な患者に回すことができる、ということが大きい。

増大している「明らかに新型コロナ」という患者を検査キットを用いずに臨床的判断を下すことができれば、検査キットを節約できる。検査キットが不足しているので、本当に検査を必要とする患者さんにそれをまわすことができる。ひいてはハイリスク患者の適切かつ速やかな医療介入に繋がり、彼らを守ることができる。「明らかに新型コロナ」というローリスクの若者に検査を乱発し本来必要とする層に検査ができないという状況になっては、本末転倒である。

「臨床診断は発熱外来の負担を減らすため」という目的説明もある。これは一見もっともらしいが意外とそうではない。

検査至上主義の現代において、検査をせずに新型コロナと診断することはできないと思いこんでいる患者に、臨床診断の概念を説明することは困難で、時間をかけても理解に至らない場合も多い。そうすると、時間をかけたにもかかわらず結局検査をしに往診するという二度手間が発生する。

また不適切な臨床診断によって、不利益を被る患者も出てきている。

詳細は割愛するが、本来入院の可能性のある高齢者への”みなし陽性”はふさわしくない。なぜか?

診断学は確率・統計学的な領域であり、「ゼロかヒャクか」というものではない。「95%くらい新型コロナ」というのが臨床診断の実際である(ちなみに巷の検査では陽性でも100%新型コロナとはならない)。

「5%も外すのか!?大丈夫なのか!?」という怒りの声が聞こえてきそうであるが、大丈夫かそうではないかは当該患者の背景によって異なる。

生来健康な若年層であれば、外れた5%が重大な疾患である可能性はかなり低く、新型コロナでなくとも自然に軽快する可能性が高い。たとえ重大な疾患でも自分でSOSを出せるだろう。

一方で基礎疾患が多い方や高齢者などは、外れた5%が重大な疾患である可能性が若年層よりも高くなる。さらに、入院する頻度も高くなるが、新型コロナではなかった5%に該当した場合、コロナ病棟で新型コロナに感染してしまう危険性がある。ただでさえ「本当の病気」で体調を崩しているにも関わらず、である。そのため、簡単に言えば入院する可能性が高い層については、検査を行い検査後確率を十分に高めておかねばならない。

それにもかかわらず、こうした患者が「非典型的な症状+希薄な接触歴」で闇雲に臨床診断されているケースが有り、いざ調子を崩して入院を調整する段階になって検査を行うので、入院までに遅延が生じてしまう。

臨床診断は流れ作業ではできない。問診と診察という”古典的な”臨床技能に基づく芸当が臨床診断であり、古いものは新しいもの(検査)と比べるとえてして手間がかかるものなのである。