第6波が来ました

第6波が来ました

2022.1.6
院長ブログ

昨年8月の第5波が沈静化後はしばらく平穏な時間が過ぎていましたが、年始よりコロナ患者が急速に増えています。第6波の幕開けと言っていいでしょう。

個人的な話ですが、先月下旬に僕の第二子が誕生しました。妻は沖縄で里帰り出産をしておりますが、その沖縄県でも中南部を中心にコロナ患者が爆発的に増加しています。今週沖縄に飛んで子供を抱っこするつもりだったのですが、諸般の事情を考慮し沖縄への渡航を中止しました。

さて、「最近は当院でコロナ診療をしてるのか」とご質問を頂く機会が増えています。

僕自身では、年明けから4名のコロナ患者を診断しております。いずれもデルタ株です。1名には経口薬(モルヌピラビル)を処方しました。第5波では、往診医はウイルス量を下げる根本的な治療選択肢を持っておりませんでしたので、経口の抗ウイルス薬を出せる状況になったことをとても心強く思っています。
幸い5日時点では診断から入院もしくはホテル療養までがとてもスムーズなので、コロナ患者の自宅往診はほとんどしていません。しかしながら、自宅待機を強いられる患者の往診の依頼が増えてくることは時間の問題と考え、心の準備をしています。

僕はオミクロン株が報告された頃から「第6波の中心はオミクロン株になるだろう」と想定していました。オミクロン株については病原性に関する明確な情報はまだ不十分です。とはいえ世界の様々な報告から、感染力が非常に強い一方で死亡率は低い、という印象は持っています。コロナウイルスはもともと単なる“かぜウイルス”ですから、新型コロナウイルスも生存戦略の中で変異を遂げながら従来の弱毒な株へと変化し自然に還っていくことを願っておりました。第6波が比較的病原性の低い株で引き起こされるのならば、単純に感染者数に一喜一憂する必要はない、僕も大騒ぎしなくてもいいかもしれない、と思っておりました。

しかしながら、現在国内においてはあの忌まわしきデルタ株の感染者が増えているのです。将来的にオミクロン株に置き換わるのかもしれませんが、デルタ株感染者が再増加しているのは非常に暗いニュースです。第5波が悲惨な状況であったのは病原性の高いデルタ株が台頭したからでした。

第6波が昨年8月と異なり、若年者のワクチン接種が進んでおり、デルタ株に感染しても重症化しにくくなっていることが期待されます。一方で、昨年8月はワクチンで獲得した免疫に守られていた高齢者の抗体価が下がり、コロナに脆弱となっているかもしれません。これは非常に脅威です。

  • コロナへの免疫力が低下した高齢者が、ブースター接種が間に合わずにデルタに罹患し多くの重症者が出たら・・・
  • こうしたクラスターが高齢者施設で起こったら・・・

こうした事が現実で生じればかなり厳しい状況になると危惧しています。コロナに対する免疫力が低下した高齢者は重症化しやすく、入院ベッドを埋め尽くしていくでしょう。さらに、コロナは消耗が非常に激しい感染症ですので、コロナ自体が回復してもなかなか退院できず入院期間が長期化する可能性もあります。コロナ専用病床の効率的な運用ができなくなり、重症化した若年層がより入院しにくくなるという事態も予想されます。

僕が俯瞰していると、どうも世間的には「第6波は病原性の低いオミクロン株が中心で、飲み薬もでてきたら大丈夫」という楽観的な雰囲気があるように感じています。無論、僕自身、繰り返しになりますが、感染者数のみを鵜呑みにて一喜一憂したり、世間の不安を煽るような情報発信をするつもりはありません。

しかしながら、

  • オミクロン株は本当に病原性が低いのか?
  • 病原性の高いデルタ株がどれくらい幅をきかせているのか?
  • ブースター接種がまだの高齢者はデルタ株へ感染しやすくなっているのか?重症化しやすくなっているのか?
  • 経口抗ウイルス薬が本当に重症化を抑制するのか?オミクロン株にも有効か?
  • 医療資源(入院病床、地域の観察体制、酸素濃縮装置、抗体カクテル薬、経口抗ウイルス薬など)は十分にあり、確実に運用されるようになっているのか?

などなど、不明点がとても多いのが現状です。

僕は、わからないことが多い中で無根拠かつ楽観的な思い込みで開放的すぎる行動を取ることには注意するべきであると考えています。過剰な自粛行動をとってほしいと主張しているわけではありません。

第6波の全容が見えてくるまでは、基本的な感染対策を徹底して、適度な危機意識を持って過ごしてほしい、と思っています。

基本的な感染対策

  • ワクチン接種
  • こまめな手洗い、手指消毒
  • マスクの着用
  • 飛沫が飛び交う状況を避ける(飲酒してノーマスクで大声で騒ぐ、など)

など

第6波が“さざ波”で終わることを心から願っています。