インフルエンザに思う
2020.2.10
院長ブログ
世間では新型コロナウイルスが騒動を巻き起こしています。
中国は湖北省武漢に端を発した新型ウイルスですが、中国の旧正月である春節による民族の大移動を契機に、中国国内はもちろん世界各国に感染者が広がり、現時点でその勢いに陰りは見られません。
院長のもとにも、新型ウイルスを心配する声が何件が届いておりますが、院長の専門分野ではないので間違った情報を伝えないことを第一にあまり多くは語らないようにしています。とはいえ、エキスパートの先生や世界的な医学雑誌Lancetで発表された記事などを通して情報収集には伝えています。
新型コロナウイルスに世間の注目が集中する中、院長は足音を建てることもなく我が上気道に侵入してきたインフルエンザウイルスの餌食となってしまい、先日1週間寝込んでしました。
インフルエンザウイルス感染性は、簡単に言えば重症化しやすく、感染性の高い”風邪”です。
ですので、特に基礎疾患のない30代の院長ですので、体を暖かくして、水分をとっておとなしく寝ているだけで、数日もすれば自己免疫のみで自然に治癒しました。
しかし、高熱にうなされる発症1,2日目は、咽頭痛、関節痛に襲われ、生きた心地がしませんでした。運の悪いことに妻と息子が沖縄に帰省している最中だったので、周囲に頼れず大変心細い思いがしました。
自らインフルエンザウイルス感染性を体験したのは随分久しぶりのことでしたので、色々と勉強になりました。
まず、鼻咽頭を拭うインフルエンザウイルス抗原迅速検査のもたらす苦痛は耐え難いものがありました。あまりの激痛に涙が出ました。この検査が患者さんに多大なる苦痛を与えることを身にしみて実感しましたので、今後は自らの手技にもっと優しさを持たせねばと考えさせられました。
さらに、今回の体験を通じていかにインフルエンザウイルス感染症がきついものか、患者さんの気持ちが本当によくわかりました。
医者の間では、重症化の懸念の少ないインフルエンザが疑われる患者さんには次のような説明をするのが良い医療者といわれています。
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「インフルエンザのシーズンに高熱、咳、鼻汁、咽頭痛、関節痛などの症状を呈する人は、インフルエンザウイルス感染症である検査前確率が極めて高いので、健康上特段の事情のない患者であれば診断のための受診や、高インフルエンザ薬の内服すら必要ない。自宅で静養するべきである」
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これまで私もこのような説明を数限りなくしてきたと思います。しかし突然高熱にうなされる患者さんがどのような思いや不安感を抱いて診療所まで足を運ばれた患者さんにとっては、この様な”正しい”説明は、突き放されたような冷たさも感じさせてしまっていたのだろうと反省させられました。
もちろん医療者として説明すべきことはありますが、それ以上にご自身の切迫した状況の中、病院を頼ってくださった患者さんにより優しさを持って接すべきであろうと、今後の患者さんとの関わりのあり方についてじっくりと考えを巡らせるきっかけとなった闘病となりました。
医者の不養生とはよく言ったものですが、患者様や関係者の皆様に余計なご心配をおかけしないように、しっかりと自己管理に励んでまいる所存です。