第6波のここまでの所感

第6波のここまでの所感

2022.2.4
院長ブログ

第5波と様相の異なる第6波の所感を、備忘を兼ねて淡々と記述してみます。あくまで個人的な見解。今後考え方は変わると思うが、書き留めておく。

まずはざっくりと第5波と第6波の違い。

・対応する患者の年齢層

【第5波】ワクチンの行き届いていない比較的若年層が中心。急激な経過で“酸欠状態”となる患者が急増。入院できずに生命の危機に瀕する人が続出。

【第6波】ワクチン2回接種後で健康な若い人はほぼ重症化せず。こういった層の“発熱外来難民”・“検査難民”が殺到。

高齢者についてはワクチン2回接種後であっても重症化する人もいるが、概ね中等症Iで止まっている印象。新型コロナそのものによる肺炎というよりも、基礎疾患をこじらせてしまう人も多い。ノーワクチンでは年齢を問わず中等症IIに進行している例もいるが、その重症感は第5波と比較すると重くない場合が多い。

・対応内容と量

【第5波】中等症IIの人へ酸素濃縮装置を運び、ステロイドを内服させるという対応をひたすら繰り返した。酸素濃縮装置が枯渇すると自力で回収・消毒・再設置を行った。体力は使う一方でやることは限られている文明確であった。

【第6波】若者を中心としたオンライン診療、往診検査、発生届入力、健康観察、電話相談、重症化傾向にある患者の往診、はたまたワクチンなどと対応の幅が広く、かつ、量が多い。第6波の一つのトピックである臨床診断や“みなし陽性”については、一部の人には非常に有用である一方でその適切な運用には時間を要し神経がすり減らされることもある。

・職員への影響

【第5波】職員の周辺に感染者は出ず、人手の減少はなし。おかげで院長が新型コロナ対応、残りのスタッフでかかりつけ患者の対応を行うことができた。

【第6波】子育て世代の職員を中心に自宅待機を余儀なくされる職員が相次ぎ、マンパワーの減少が生じている。結果的にかかりつけ患者さんへの訪問を十分に行うことができなくなっている。非コロナの新規患者の受け入れも不可能となっている。

結果として現場ではこうなっている。

・膨大な業務を少ない職員で対応する第6波

ある意味で第5波以上に職員の、特にメンタル面での負荷が心配される。オンライン診療の依頼が集中し連絡が遅れてしまった場合などに、「長いこと待たされた!」と感情的なクレームをぶつけられてしまうことも多い。

院長のやる気のキャパシティに余裕があっても、組織全体の動きを俯瞰すると、診療を制限せざるを得ない場面が出てきている。

・“実効コロナ対応病床”が逼迫

周知のことながら当院で起こっていることは大きい病院でも起こっている。

第6波で増えている高齢の入院患者に対しては、若い患者と比較すると医療や介護の面での必要マンパワーが全く異なる。体の向きを変えたり、病衣を交換したり、排泄介助をしたり。はたまた廃用を予防するためのリハビリをしたり。

多くのマンパワーを要するのにもかかわらず、出勤できない医療従事者が立て続いている。

ベッドがあって患者を受けたくても、人手が足りなくて患者を受けられない。

第5波のときも幽霊病床の問題はあったが、今回のそれとは本質が異なる。

病床利用率は50%と低めに見えても、実際に患者を受けられる“実効病床”については、ほぼ余裕がなくなっているとみられる。当院の非常勤医は普段こうした急性期病院で働いているが、そこでのリアルな窮状を吐露している。

・“コロナにならなければ大丈夫”とも言えない

第5波では、新型コロナ患者は入院しにくかった一方で、非コロナ患者の入院は、時間こそ要することはあっても、搬送先が決まらないということはなかった。

しかしあらゆる意味で大幅な医療リソースが縮減されている第6波では、非コロナ患者の入院も非常に厳しくなっている。いやむしろ、非コロナ患者のほうが入院できないという状況なのかもしれない。

昨夜当院のかかりつけ患者が急性心筋梗塞を起こしたが搬送先が見つからず、翌朝死亡した。夜間担当した医師の無念な表情には胸が締め付けられる思いだった。

僕の知り合いに話を聞いても、「今AMI(急性心筋梗塞)やSAH(くも膜下出血)が来ても取れない。現実にこれらの患者が搬送できずに死亡する例がチラホラ見られている」とこぼす。

救急医療を受けるべき患者が受けられなくなっているという、近代国家としてありえない“医療崩壊”という現象が、数ヶ月の時を経て、再燃しつつある。