クリニックの2本柱:それは「訪問診療」と「教育」
3月を迎えたとたんに春の陽気が感じられるようになりました。
僕はまあまあ重い花粉症を持っており例年やや憂鬱になってしまうのですが、今年はマスク(それもN95マスクと言うより防塵性能の高いマスク)を日常的に装着しているからか、あまり鼻閉・鼻汁に悩まされずにすんでいます。フェイスガードも使うので、心なしか目のかゆみも抑えられており、より目の前の患者様に集中することができています。
さて突然ですが、当クリニックには社会的な役割として次の2本柱を据えています。
1つ目は、言うまでもなく訪問診療を通じて地域の患者様の健康福祉に寄与すること。
2つ目は、教育です。
ここで言う教育とは、医師や看護師、相談員や事務職などのスタッフ全員に、訪問診療における患者さんの診方・考え方を学んでもらうためのものです。教育という柱の重要性を職員が認識することで、あらゆるスタッフが医療人としての生涯学習を継続し、より質の高いケアを患者様に提供することができるのです。
教育といってもその内容は幅が広く、朝と夕方の申し送りでのワンポイントレクチャーから、最新の医学的知見を職員で共有するなど様々です。日常診療から生まれた臨床的疑問をもとにして、職員が横並びにあって各自調べたことやこれまでの知見を出し合ってそれを解決しようとすることにも大きな学びがあります。
先日は、原因不明の発熱の患者様のアプローチをみんなで話し合いました。
「熱が出ているからクラリス。効かないからクラビット。それでもだめなら救急車」などと雑な医療をしていては患者様に大変失礼です。
・攻める問診で問題点を集めきれたか?
・どんな熱の出方をしているのか?その熱型からどんな原因が考えられるか?
・バイタルサインから病態にどの程度迫れるか?
・身体診察をしっかりとったか?
ということを確認しながら、鑑別診断(原因となりうる病名)を列挙し、それを可能性の高い順に並べます。そのうえで、most likely diagnosis(一番可能性の高い病名)はもちろん、must rule out(絶対に見逃せない病名)を抑え、見逃しがないようにします。
その上で、
・どのような検査を、なんのために行うか?
・どのような病気を考えて治療薬を選択するか?
・類似の薬の中でなぜそれを選択するのか?
というようなことを丁寧に掘り下げて話し合うのです。
こういった話し合い(医療の世界では”カンファレンス”とか”カンファ”と呼ばれます)を行うことで、患者様により最適で安全な治療法を提案することができることはもちろん、その過程を通じてスタッフがより深い臨床経験を積むことができるのです。
時として診察の場で患者様の疑問にお答えし切ることができませんが、そういう場合はクリニックにその疑問を持ち帰り、全員でカンファを開くことになります。そうして、より確度の高い回答をその日のうちにお電話などでさせていただきます。
患者様が安心して療養していただけるように、これからも教育をなおざりにしないようにしていきます。
訪問診療領域のcommon diseasesを通じて臨床スキルを磨いてみたい方がおられましたら、ぜひ一度当院へ見学に起こしください。