身寄りのない人の在宅看取りを叶えるには(主に医療以外の観点から)
2021.1.30
院長ブログ
冒頭申し上げますが、表題に対する明快な答えは現時点で持ち合わせておりません。
最近身寄りのない患者様が自宅で最期を迎えたいと希望することが増えています。今後ますます増えていくでしょう。しかし、そこには様々な問題があり都度関係各所と頭を悩ませながら患者様の最期の願いを叶えるために奔走しています。たとえ身寄りがなくても患者様が「自宅で最期をまでくらしたい」という希望があるなら、死後の行政手続きの複雑さ・煩雑さを理由に意思に反して患者様を“病院に送り込む”ということは絶対に避けたいと考えています。
急性期病院をsocial workのために利用するのは医療資源の利用の仕方として適切ではありません。そして病院で亡くなったとしても身寄りのない人における本質的な問題は全く解決されないのです。それなのに患者さんの尊厳を、身寄りがないというだけで奪いたくないというのが率直な思いです。
しかし同時に、その背後にある行政・介護・医療の負担についても何度も直面し頭を悩ませてきました。
法整備も必要ですが現時点の仕組みとして備忘のために現在の制度と問題をまとめておきます。
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・成年後見人:原則死亡の瞬間に契約が終了する。しかし現実的には葬儀の手配まではやってくれることも。ただし、財産や契約にはタッチしない。
・死後事務委任:行政書士や弁護士。葬儀、埋葬、財産管理までやってくれる。250−300万かかる。
★お金の問題が大きい。
・身元保証サービス:民間で提供されているサービス。問題もあるようである。事実上上記の死後事務委任のようなサービスもある。
これらを利用しないと;
・病院死:行旅死亡人取扱法を拡大解釈することで病院から連絡を受けた自治体が火葬、埋葬を行う。
・自宅死:行旅死亡人取扱法を拡大解釈することで警察から連絡を受けた自治体が火葬、埋葬を行う。
・訪問診療が入っている場合、在支診は病院にあたるのか?クリニックから福祉管理下に連絡すれば動いてくれるのか?
*行旅死亡人取扱法の管轄は区役所の福祉管理課。
財産については利害関係のある債権者が家裁に申し立てし、財産管理人を選定してもらう。手続きには非常に煩雑で相続問題に特化した弁護士に頼むことも多い模様。
★疎遠の縁戚がいることが判明している場合は、たとえ連絡が取りづらい状況であっても原則財産管理人は申し立てできない。
身寄りのない人を病院に入れたとしても、自宅で死亡したとしても、行旅死亡人取扱法を適用する以降の問題は変わらない。
であるならば、訪問診療クリニックが福祉管理課と連絡を取り合いこういう事態を共有すればよいのでは。
自宅で亡くなることが行旅人に該当しないのであれば、死亡診断前にクリニックに搬送し、そこで死亡確認すればよいのか?
なるべく行政に負担をかけずに身寄りのない患者の在宅死の願いを叶えるために在支診にできることは?