【ご質問】大学での感染リスクについて

2021.9.8
院長ブログ

※ツイッターやお問い合わせで寄せられたご質問内容について、有用であると判断したものは質問内容を改変しブログでご紹介します(田代の備忘を兼ねています)。
※回答についてはいわゆるエビデンスを最優先しますが、それを元に田代が考えた内容であり、最終的な責任は読者様に委ねられますことをご理解ください。

 

【ご質問】

・大学生でフルワクチンの方

・大学での講義と、満員電車での通院時の感染リスクが心配。

【回答】
・通常の環境で講義を聴講するだけであればリスクは低いのではないか。
・満員電車も、避けるに越したことはないが、周囲の環境によってはリスクは高くはない。

この度はお問合せありがとうございます。

 

まず、COVID-19に感染する経路として最も重要になるのは、「ウイルス量の多い飛沫の吸引」という感染経路です。さらにその飛沫の飛ぶ距離ですが、咳の場合2〜3mほど、くしゃみの場合は3〜5mほどと言われています(JAMA. 2020;323(18):1837-1838.)。通常の会話であれば2mに満たない距離ではないかと言われています(social distanceの根拠です)。

 

そのため咳・くしゃみをしている人とは少し距離を取ることはreasonableです(忌避的な過剰反応をせよと言っているわけではありません)。

 

質問者さんが特に心配されておられる条件は以下の2点です。

 

①大学の対面授業
※最低限の換気はされていると仮定。先生が講義をし、それを質問者さんが聴講するという場合で考えてみます(group workはこの限りではありません)。
a.先生が感染している場合
先生や質問者さんがマスクをしており、先生が通常の声量で講義をしており、且つ咳・くしゃみがなければ、お二人の距離が概ね2m以上離れていましたら、感染リスクは必ずしも高くはないと考えます。
b.受講生の中が感染している場合
学生同士が隣同士でも、互いにマスクして距離をとっており、咳・くしゃみ症状がなく、会話がない状態であれば感染リスクは低いでしょう。

 

②満員電車の場合
電車内は換気はしているとは言え非常に密な状態ではあるので感染成立の可能性は大学で授業を受けているときよりも高くはなるかと思います。
しかし、乗客同士ほとんど会話がない=飛沫が出にくい状況です。質問者さんがマスクを外した状態で、同じくマスクなしで咳・くしゃみをして飛沫をまき散らす陽性者とある程度の時間密接しているという状況でなければ、感染リスクがとても高いというわけではありません。

 

僕の経験上でも、感染してしまった人は職場でマスクなしで同僚と会話していた人(ついついお互いマスクを外して会話してしまう、という状況はよくあります)、ランチの時に黙食しなかった人(閉所で会話しながら食べていた人)などが多いように感じています。
塾でのクラスターは見られても大学の授業を契機としたクラスターが少ないのは、やはり授業そのものよりも授業の前後での生徒同士の活動的な会話を介して飛沫が飛び交っていたのではないかと考えています。
もちろん、デルタ株は感染力が非常に強いので、十分に対策をしていたとしても感染してしまうときは感染してしまうでしょう。ゼロリスクを実現することは不可能であり過度に追い求めようとすると精神衛生上よろしくないでしょう。ハイリスクを知って、リスクを減らす行動をとることが重要です。その一つにフルワクチン接種も含まれます。

 

ご心配なことは大変共感できますが、感染経路とその特徴を知れば、自ずとハイリスク行為が見えてくると思います。正しく知って正しく対策されれば過度に恐れなくても良いと考えています。