コロナとの闘い

コロナとの闘い

2021.2.17
院長ブログ

つい最近まで、コロナという言葉遣いがあまり好きではありませんでした。

細かい話ですが、コロナウイルスには様々な種類があり、それこそ単なる風邪を引き起こすコロナもいれば、今回のようなパンデミックを引き起こすコロナまで多岐にわたります。

つまり、コロナと一括りにするのではなく、あくまもじどおりで新型のコロナウイルスであることを意識して“新型”コロナもしくはCOVID-19と呼称するようにしていました。

しかし今や新型コロナは世間に認知されて1年以上たち、人々の暮らしに大きなインパクトを与えており、もはや新型コロナは“新しい”ものではなく、これこそががコロナウイルスであるというところに来ています。そのため、最近は僕もコロナ、コロナと呼称するようになってしまいました。このブログでも、一般目線で単にコロナと記載することにします。

 

さて、当院は大田区の在宅クリニック(訪問診療・在宅医療を専門としたクリニック)の中ではコロナ対応の経験が多い方ではないかと感じています。

詳しくは記載しませんが、様々な年齢層の患者さんで、発症から軽快、あるいは増悪まで診療経験を積んでおります。そのため、コロナのリアルなゲシュタルト(こんな病気、というイメージ)が形成されつつあります。

自分の身を守ることができてこそ医療人としてのプロであり、自分を守ることが患者さんを守ること、という基本的な姿勢に日々真摯に向き合っておりますので、ひなたがコロナを持ち込むのでは?というご心配についてはどうぞご安心ください。

一般的にコロナウイルスは5−10日かけて強めの感冒症状があり、重症化する人はその後強い炎症が起きてしまって生命の危機に瀕するという経過を辿るとされます。この後半の経過はPost-Corona症候群とも呼ばれます。

当院で普段診療する患者様はご年配で、心不全や糖尿病、認知症という慢性疾患を複数抱えた方が多いです。ということは、当院が診療するコロナ患者のほとんどは重症化のハイリスク因子を多数抱えた方です。

発症当初〜療養場所に移るまでは症状は軽微である方が、10日間の隔離期間を終えて退院してきたときには尋常じゃないくらいやつれてしまっていることをしばしば経験します。

認知症などがあると入院という環境の変化だけで体調を悪くするリスクになりますが、僕の経験上、他の疾患と比較してコロナほど入院の前後で非常に調子が悪くなってしまうものはそうそうないと感じています(医学的な考察もしてはいますが、このブログでは控えます)

先述のように悪くなってしまうのは発症から1週間前後ですので、ちょうど悪くなってしまう期間が退院のタイミングとオーバーラップしてしまうことはごく自然なことなのです。

「完璧に良くなるまで入院させればいいんじゃないか」という疑問が湧くのも当然です。しかし、新規発症者数は減少傾向とはいえ病床には依然余裕がない中、療養病床の社会的かつ本質的な役割は、全快するまでの療養の場というだけではなく、感染力のなくなるとされる時期がくるまでの隔離にあるといえます(患者さんがどれだけ強い治療に耐えられるか、ということによっても入院期間は変わってきます)。

隔離期間を終えて自宅に戻ったのにも関わらずぐったりする患者さんをみてご心配されるご家族でも、再入院を希望される方は意外と多くはありません。ご年配であり延命治療を積極的に希望しないこと、環境の変化でさらに認知症などの基礎疾患が悪くなってしまうのではないかという懸念があること、もしもの時でも病院で面会できないことがその主な理由なようです。

そう言った場合、自宅でPost-Corona症候群の診療を行うことになります(この時点では感染力はほぼほぼ無いとされています)。

僕にとっては(少なくとも)自分の患者さんが、コロナにやられてしまうことは胸が張り裂けそうになるくらい耐え難いことです。ご本人に極端な負担をかけないのはもちろんですが、できることはなんでもやって、何とか救いたい!という強い気持ちでPost-Corona症候群の診療に全力投球しています。

そのために、世界の治療治験を集め、批判的に吟味し、時にはコロナ診療の最前線にあたる友人の医師に直接知恵を拝借しています。そこで得られた情報をもとに、実現可能なことはどんどん実行しています。

また、Post-Corona症候群に理解のある訪問看護師さんの力も多大にお借りしております(心より感謝します!)。もちろん、僕がコロナ診療に注力することをサポートしてくれるクリニックスタッフ、「頑張ってね」と応援してくれる他の患者さんらに活力をいただいております。

今のところ厳しい経過をたどりながらもPost-Corona症候群を乗り越える患者さんばかりで、超高齢者も改善傾向を辿るようになっております。良くなりつつある患者さんの笑顔に医師としての幸福を感じつつ、最前線の医療スタッフに敬意を払ながら、コロナと闘います!